梅雨ノ井跡・八雲神社跡 (京都市上京区)
Tsuyu-no-i Well
梅雨ノ井跡・八雲神社跡 梅雨ノ井跡・八雲神社跡 
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梅雨ノ井
 出水(でみず)付近は、古くより豊富な名水で知られた。鴨川・紙屋川などの伏流水の湧水地に当り、伏見と並びかつては造り酒屋も集中していた。
 「梅雨ノ井(つゆ-の-い)」は、聚楽第の数少ない遺跡の一つとされる。付近には、かつて八雲神社が祀られていた。
◆歴史年表 かつて、梅雨ノ井の付近は清水町とも呼ばれていた。
 安土・桃山時代
、1587年、現在地一帯に豊臣秀吉は聚楽第を完成させたという。
 江戸時代、1788年、天明の大火により、井戸は埋没したという。その後、復活する。
 近代、1877年、東辰巳町の町民は、梅雨ノ井周辺の土地を、再興された豊国神社の御旅所用地として寄進する。
 1893年、梅雨ノ井付近(大宮通下長者町上ル西入ル北入ル)に八坂神社の分霊を勧請し、八雲神社が祀られた。秀吉が愛でたというモチノキを神木にしていた。
 1934年、八雲神社のご神木のモチノキは、室戸台風により枯死する。その後、2代目が植えられる。
 現代、1950年、梅雨ノ井内部の石組・積石・井筒が崩壊し埋もれた。
 1990年、一帯の地上げにより、八雲神社・モチノキも取り去られる。現在は、井戸跡だけが残されている。
◆梅雨ノ井 「梅雨ノ井(つゆ-の-い)」(松屋町通下長者町通上ル西入ル、住宅地の露地奥にある私有地)の地は、かつて、清水町とも呼ばれた。付近は名水「金名水・銀名水」の湧水でも知られ、秀吉も茶の湯に用いたという。 
 「梅雨ノ井」の名は、入梅の頃に、石組の井筒の上から水が溢れ出たことに因む。梅雨明けの7日前になると水が溢れ、梅雨が明けると元の水位に戻ったともいう。溢れた水は、出水通の溝を満たした。空梅雨の年には溢れることはなかったという。
 江戸時代の『三都自慢競』には、江戸「麹町の井戸」、大坂「天野寺亀井」とともに「つゆの井」の名がある。 
 なお、井戸は、安土・桃山時代、1595年の聚楽第破却後に掘られたともいう。大徳寺(北区)門前の民家にも同名の井水があったという。(『雍州府志』)
◆八雲神社 梅雨ノ井の東(大宮通下長者町上ル西入ル北入ル)は、かつて聚楽第の一隅だった。社殿背後にモチノキ(モチノキ科モチノキ属の中高木)が植えられていたという。豊臣秀吉も愛でたという。後世、この木に触ると祟りがあるとされた。
 近代、1893年に八坂神社を勧請し、モチノキを神木としていた。無格社の八雲神社と呼ばれた。1934年の室戸台風によりモチノキは枯死し、その後2代目が植えられた。
 1990年に一帯の地上げにより、八雲神社・モチノキも取り去られている。
◆酒造り 日本で米の酒造りが始まったのは、3世紀頃と見られている。平安時代の大内裏にあった「造酒司(みきのつかさ、ぞうしゅし/さけのつかさ)」が置かれたのもこの地だった。
 造酒司は、宮内省の官司で、天皇や中宮に出す供御、朝廷の節会、神事のための酒、あまざけ、酢などを醸造していた。白酒や黒酒など十数種類の酒が、季節や祭礼に応じて造られていた。
 鎌倉時代-室町時代に、寺社、貴族の庇護の下、酒屋(酒座)が酒を売るようになる。また、寺院での酒造りも行われ、貴重な財源になっていた。
 室町時代、1425年の「酒屋名簿」の記録によると、洛中洛外合わせて342軒の酒蔵があった。五条坊門西洞院・中興の「柳の酒」は、京都の銘酒として全国の一割を販売していた。この酒は、柳樽に詰められ売られた。造り酒屋は、清水寺、建仁寺、祇園社の周辺に集中している。江戸時代には、酒屋は千軒あまりになっている。
◆聚楽第 梅雨ノ井の地は、聚楽第の東南隅に当たるとされ、聚楽第の数少ない遺跡の一つという。聚楽第本丸南東櫓・東辺城壁付近と重複している。
◆出水 かつて烏丸の西に湧水があり、時に水は溢れ道が浸水した。後に烏丸川が埋まり湧水は止まった。以来、出水の地名、通り名の由来になったという。


*年号は原則として西暦を、近代以前の月日は旧暦を使用しています。
*参考文献・資料 『秀吉の京をゆく』、『京都大事典』、『織豊系城郭とは何か-その成果と課題』、『京都歴史案内』、『昭和京都名所図会 5 洛中』、『文化財・史跡ウォーク 聚楽第と周辺ガイド』、『京 no.55』、『京都の災害をめぐる』


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梅雨ノ井 〒602-8255 京都市上京区東堀町616,和泉町上長者町下ル
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